"Soloist"

曲の始まりから鳴るそのサビは全編ファルセットで歌われる。直後から16小節続くまろやかな響きのラップ、ピアノのコードとギター、リズム、そしてベース。最小限の音の重なりで織られたゆったりとした音楽はネオソウルに通ずる世界で、洗練されていて都会的な雰囲気を漂わせる。

8月27日にリリースされた「Soloist」。2025年に再始動したUZのソロ名義による活動の第2弾として届くこの新曲は、SPYAIRのメインコンポーザーとして100曲以上楽曲を発表してきた彼のキャリアの中で、特別な新しさを持って響くのではないだろうか。UZの内にある触れたことのない大人の色気と心地いいチルさを併せ持っている。

そんな中で歌われる歌は、彼の至極パーソナルな日常。UZが、「日々のルーティンもひとつ角度を変えれば旅になる。旅している時間のように日常を大切にしよう、いい音楽をかけて過ごそうというのがテーマ」と話すその歌詞では愛用のギターやバイクの固有名詞で韻を踏んだりしながら、核に〈Traveling without moving〉というフレーズが描かれている。つまり、日常から移動せずとも想像することで心の旅はできる。ドリップコーヒーの薫りを味わう時間、音楽を聴く時間、すべてが新鮮な景色を連れてきてくれる。そうやって今を楽しんで生きようという誘いだ。

先駆けて6月25日に第1弾としてドロップされた「Fly Higher」と、「Soloist」に共通して存在する“今を生きること”と“旅”はこの先に控えるソロ1stアルバムに流れていくテーマでもある。1曲1曲手にするごとに広がり、深まっていく旅世界を堪能しながら、アルバムへと想いを馳せたい。

文・大西智之