"STATE OF RHYMES"
警笛のように、鋭く張り詰めた単音のループが、弛緩した意識の覚醒を促す。そのサウンドの上で放たれるのは、彼の母体であるバンドで鳴らすロックの枠組からはみ出した16小節に及ぶラップと、一度切りの人生でやりたいことへ踏み出す覚悟を宿した言葉──ソロワークスの“旅”に出る自身の心情を捉えた「State Of Rhymes」からUZのソロアルバムはスタートし、ここから1枚の作品として物語が展開していく。
SPYAIRのメインコンポーザーUZが、3年以上の時間を注ぎ込んで完成させ、リリースする1stソロアルバム『STATE OF RHYMES』。ここで描かれているのは旅だ。それは、この作品の軸になっているループミュージックとラップミュージックという現在の彼がリスペクトを置く音楽から、「Blue Map」で響くルーツであるロック、「Soloist」「Jazzy 84」「Urban Cruise」で感じられるネオソウルやアーバンミュージック、ジャズ、ソウルミュージックといった実験や好奇心、未来へと繋がるサウンドまで、音楽探求の旅。さらには、「Muse」などで感じられる曲作り只中の先の見えないクリエイティヴの旅、「One More City」の自由に街を歩く自身の姿を写したリアルな旅……さまざまな角度で切りとった旅の記録である。また、2024年以前に作った楽曲を一度リセットして制作されたこのアルバムに唯一、2023年発表の「Take My Wish」という、ソロ第一弾シングルであり、一連のソロ活動で初めて形にした楽曲が収録されていることで、ソロワークスの旅の物語を強く感じられる。
そして、『STATE OF RHYMES』の旅は、ミディアムテンポの「Photographs」へと行き着く。“なぁ聴こえるか?My buddy”の呼びかけから始まる温かさとエモさを宿したこの曲で彼は、どんな旅もやがて終わりを迎えてサヨナラするから響くんだ、だから笑おう、とメッセージする。“一度切りなんだBecause life goes on”と歌う。
さらに、UZは同作品発表後の12月13日にソロ初のワンマンライヴを開催。これはソロを始めてから目標のひとつとしていたステージだが、その場に立ち、“My buddy”と呼べる人たちの前で約3年向き合い続けた音楽を鳴らした時、どんな感情が彼の心に飛来するのだろうか。やり切ったと思えるのか、またソロでも音を紡ぎたいと感じるのか……。
ひとつ言えるのは、彼の音楽好奇心と作曲への火が燃え尽き、消えることはないということ。SPYAIR、楽曲提供、そしてソロと情熱を注ぐ選択肢は広がっており、音楽家としてのたった一度の人生は続いていくのだから。
文・大西智之